これまでに骨盤矯正に関する怪しいキャッチコピーについて,深堀りした記事をいくつか書いてきました。
深堀りしていくと,結局どれも「根拠が乏しいビジネストーク」だという結論に至りました。
しかし,こうした宣伝文句は,多くの人が
「骨盤は歪むものだ」
「矯正すれば健康になる」
と信じ込むきっかけになっています。
そもそも,「骨盤矯正」って一体何なんでしょう?
結論を先に言うと
「骨盤矯正」という言葉を使っている時点で,その院は信用すべきではないのです。
その理由について解説したいと思います。
もくじ
「矯正」という言葉の本来の意味は?
矯正とは,辞書で調べると
「正常な状態に変え正すこと」
を指します。
例えば,歯列矯正はワイヤーで歯を長期間動かし,固定器具で安定させるからこそ「矯正」と呼べるわけです。
つまり矯正には「強制的に変化させ,安定させる」という前提が含まれています。

では,整体院や鍼灸整骨院が「骨盤矯正」と称して行うのはどうでしょうか?
骨盤を固定する器具を体内に埋め込むわけでもなく,数分の施術で骨盤の形が恒常的に変わることはありえません。
つまり
よくある「骨盤矯正」という言葉は,本来の意味から大きく逸脱しているのです。

骨盤はそもそも歪まない
骨盤は,
大きく分けると左右の2つの寛骨と,仙骨という3つの骨で構成され,靭帯や筋肉でがっちりと結合された強固な構造物です。


役割は「上半身を支え,下半身に力を伝える」ことです。
交通事故や大きな外傷で骨折や脱臼が起きれば,これらの骨盤の位置関係は崩れますが,それは医師による外科的治療が必要なケースであり,整体院の手技でどうこうできる問題ではありません。
つまり,日常生活の中で「骨盤が歪んだ」と言われたり,感じることのほとんどは,実際には骨盤自体が歪んでいるわけではないのです。
多くの場合は,姿勢の崩れや筋肉のアンバランスを「骨盤の歪み」と都合よく言い換えているにすぎません。
骨盤矯正というビジネス
鍼灸整骨院や整体院の多く(特に大型店やチェーン店)は,医学的根拠のない「骨盤矯正」というフレーズを使って集客しています。
なぜなら「歪んでいる」と言われると,人は不安になるからです。

「あなたの骨盤は歪んでいます。」
「姿勢が悪いのは骨盤が歪んでいるからです。」
「骨盤が歪んだままだと,冷えやむくみの原因になります。」
と不安を煽り,定期的な通院を勧める・・・これが典型的な「骨盤矯正ビジネス」です。
実際に「骨盤矯正」を受けると,一時的に筋肉の緊張が緩んだり,血流が改善したりすることはあります。
しかし,それは単なるマッサージやストレッチでも得られる効果と変わりません。
にもかかわらず
「骨盤が正しい位置に戻りました!」
と説明されることで,あたかも特別な治療を受けたように錯覚させられているのです。
つまり,「骨盤矯正」を謳っている院は
- 骨盤の構造を理解していない。
- 理解はしていて,通わせるためにあえて不安を煽っている。
このどちらかだと言えるのです。
信用できる院の見分け方
鍼灸整骨院や整体院を利用すること自体が悪いわけではありません。
一生このままだと諦めかけていた身体の痛みやしびれや,あらゆる検査をしても原因不明の身体の不調が,鍼灸整骨院や整体院で改善したという話は良くあります。
ただし,技術も知識も乏しい,ただ売上を上げることだけを考えているような鍼灸整骨院や整体院に行かないことが重要です。
その一つの目安が「骨盤矯正」という言葉であり,「骨盤矯正」と看板や広告に堂々と書かれている時点で,その院の専門性や誠実さには疑問符がつきます。
ちなみに骨盤の構造を正しく理解してる院は
「骨盤を調整」
「骨盤へアプローチ」
などの言い方をしてる場合が多いです。
(しかし,それも絶対ではありませんが・・・。)
さいごに・・・
「骨盤矯正」という言葉は広く浸透していて,「骨盤を矯正しました!」って言われると,何か特別なことをしてもらった気がする人も少なくありません。
実は,この「骨盤矯正」というか,(インチキではなく正しい)骨盤へのアプローチは,確かに身体へ様々な良い結果をもたらすことがあり,そのため,何十年か前にアチラコチラでインチキなものも含めて,急速に広まっていったんです。
どんなことでもそうですが,何かが流行すると,必ずウソくさい偽物が便乗して現れますよね。
あれと同じです。(笑)
医療が日進月歩で発達してるのと同様に,我々が行う手技療法も,毎年のように新しい手技療法が生まれてくるんです。
そのため,骨盤矯正よりもっと結果の出やすい手技療法も,今はたくさん存在してるので,言い方は悪いですけど,今更枯れた技術とも言える「骨盤矯正」にこだわったり,気にする必要はないと思いますよ。